質問:ピッピ 男 32歳

はじめまして。

私が結婚前提にお付き合いしている29歳女性のことで相談です。

彼女は結婚前提に同棲しておりましたが心身弱り、一度実家に帰ってしまいました。

その後、しばらくは連絡もとれない状態からようやく少し復調したところで精神科へ。

統合失調症と診断されました。

それから二週間、エビリファイ3mgを服用しております。

薬のおかげか何とか連絡はとれるようになりましたが相変わらずなかなか会うこともできないほど自分の毎日でいっぱいいっぱいのようです。

ここからが悩んでおります。

薬を飲み始めて明らかに明るくはなって良かったのですが少々自分勝手で奔放に感じます。

・私とは会ってくれないですが友達や家族とは毎日のように遊んだりご飯を食べに行ったり。

・彼女の親御さんが貯金がないことを理由に結婚反対しているため一生懸命貯金をする!と言っていた割には急に習い事を始めたり、コンサートへ出かけたり散財している様子。

・私が女性たちとの飲み会に参加するのは嫌だと言っています。でも自分は男性たちがいる飲み会などを企画していたりします。

もともとは相手の気持ちを考えて思いやれる彼女だっただけに困惑しております。

よく統合失調症の人は信頼していたり身近な人に対してこそガサツになるとも聞きますがそういうことがあるのでしょうか?

また、私とは相変わらずの距離感をとっていますが急にいろんなことを始めたら自分勝手に突き進んでいるのもエビリファイによる意欲増進によるものなのでしょうか?

この最近の支離滅裂な彼女の言動や行動を指摘して良いものか、そして近くにいる私はどのように接すれば良いものなのか専門的に視点から御教授ください。

よろしくお願いいたします。

回答:ピッピさん

ご相談ありあとうございます。

ピッピさんはいま恋をしているのですね。

さて、結婚をするという現実的な手続きを取ろうとする段階になると、お金、家庭、ご病気だったりとロマンチックからは遠い話題が出てくると思います。

そして、一緒に生活するとより多くの自分との違いを見つけることになると思います。それらがこの先、何十年も続いていくかもしれません。

結婚という制度、他人との共同生活や子育て、それらに付随する各種の出来事をどう捉え、どういった方向に、2人で長い時には何十年も、進んでいくのか?

いち精神科医には手に余る話題です。

ジョーゼフ・キャンベルという神話学者がラジオで聴取者の相談に答えた本

「ジョーゼフ・キャンベルが言うには、愛ある結婚は冒険である。―ジョーゼフ・キャンベル対話集」

から引用しますと、

「恋愛は手近な個人的満足にすぎません。しかし結婚は試練です。繰り返し歩み寄ることです。だからこそ神聖なのです。二人の関係に参入するために、一人の単純明快さを手放すのです。自分を相手に与えるのではなく、二人の関係に与えるのです。そして自分が相手と同等にかかわり合っているのだと気づけば、関係性に自分を与えることは、自分を失う不毛なことではなく、人生を慈しみ豊かにする経験となり、人生を築くことになるのです」

私の好きな一節です。

具体的にご質問を頂いた件に関して精神科医として回答いたしますと、彼女さんを実際に診ていないので正確なことは言えませんが、ご自身の氣持ちを正直に伝えることから、始めてみられるのはいかがでしょうか?

あなたがおかしい、あなたがいけない、あなたがこうすべきなどという伝え方ではなくて、

私が寂しい、私が悲しいと伝えることで相手の心にとても響きます。

よく統合失調症の人は信頼していたり身近な人に対してこそガサツになるとも聞きますがそういうことがあるのでしょうか?

→ということですが、身近な人には愛情と憎しみ、相反するような感情を両方を表現することがあります。ガサツになるというのはあまり聞いたことがありません。

また、私とは相変わらずの距離感をとっていますが急にいろんなことを始めたら自分勝手に突き進んでいるのもエビリファイによる意欲増進によるものなのでしょうか?

→エビリファイで意欲が出るという作用は考えられますが、確実にそうだとは言えません。結婚は人生において大きな転機で素晴らしいことですが、一方で、今までとは異なる生活スタイルに適応する必要が生じたという点で、ストレスになります。同棲も同様です。そしてそのようなストレスが発病の原因に大きく関わっております。新しい生活に適応するために、彼女は頑張り過ぎてしまってのかもしれません。そして、一旦実家に帰られ、元の環境に戻り少し安心したのでしょうか。治癒力が働き意欲が出たように見えることも理由の一つとしてあるかもしれません。

この最近の支離滅裂な彼女の言動や行動を指摘して良いものか、そして近くにいる私はどのように接すれば良いものなのか専門的に視点から御教授ください

→彼女の言動、行動を指摘するのは彼女がのびやかに回復する手助けにはなりにくいかと思います。それよりかは温かく見守ってください。自分のところに近づいてきたら抱きしめて「生まれてきてくれてありがとう。愛してる」と言ってください。

そしてピッピさんはピッピさんの人生を楽しく充実してお過ごしになるとよいでしょう。そうすることによって彼女に有り余った元氣をあげることができるでしょう。

という回答になります。

もし可能であれば彼女の受診に同席し、お薬のことや接し方など主治医の先生に色々お聞きになるとよいかもしれません。彼女のことをより詳しくご存知かと思いますので、もっと分かりやすく説明してくれるかもしれません。

彼女もピッピさんも幸せであることをお祈りしております。

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