宇宙一の夫が購入してくれた、神田橋先生今年一番オススメの著。

こんな素晴らしい医師がいる…とても希望になりました。

『土居健郎の言葉を借りて言うなら、がん患者が抱いている恐怖は「容易に言葉にならない恐怖」であり、「察したつもりで面接者がそれを言語化してみても、患者を一層恐怖させるのが落ちである。…言語化できないでいる患者の心情をこちらも言語化なしに沈黙の中に察するのが、気持ちを汲むということの真義であると思う」だから、初対面の患者に向かっていきなり「あなたは不安に思っているでしょう」などと切り出すのは、「決して気持ちを汲んだことにはならない」p11』

→患者さんが言語化できないときは一緒に沈黙!素晴らしい時の過ごし方!土居健郎先生の動画を見たことがあるのですが、この方の沈黙力、ハンパではありません。

『前に診た〇〇と同じようなケース、と思ってしまうと、細部に目が向かなくなる。一例一例を新たなケースとして、不断に「関与しながらの観察」を行うには、意識的な努力を要する。p27』

→ハッとさせられました。この方の言葉はシャープに突き刺さります。

『裏を返せば、肺尖部の腫瘍によるがん性疼痛であっても、痛いのは体だけではなく、心も同じように痛いのである。心も体も同時に痛いのだ。p47』

→痛みを主に訴えられる方に心の痛みほど共感しなかったこと、反省しました。

『…自分のことはさておき、人のためにというパターンが繰り返されていることが見えた。「ご主人のことよりも、自分がどうしたいかで決められたらいいのではないですか?」と言いたい気持ちに駆られたが、そう言われてそのように決断したら、その忠告をした私の思いに応えることになり、彼女自身の決断ではなくなる。話を聞きながらこれらのことを瞬時に考慮して、言葉を挟むのを差し控え、そのまま聞き続けることにした。p55』

→これを読んでつい口をつく時を反省しました。。本当にその通りだ。

『「もう十分自分を責めたではないですか。痛みをとって楽に過ごしたらどうですか」という言葉が何度も口をついて出そうになった。しかし言葉にはしなかった。どういう道を選ぶかは、彼女自身が選ぶべきだと思ったからである。p56』

→同上。。

『患者の語りに耳を傾けてはその記録を残し、事例検討を行って振り返る、ということを繰り返し行ってきた。…患者の言葉に耳を傾けるという姿勢を失いさえしなければ、毎日が新鮮で、常に新たなことを教えてもらえるのである。p60,61』

→本当に素晴らしい。これを自発的にやってらっしゃるとは本当に頭が上がらない。

『記録に残さなければ患者とのやりとりは時とともに記憶から薄れ、聞き方の盲点はいつまでも盲点として残り、話の聞き方は我流にとどまって、そこに向上はない。…自分の記憶力を信じてはならない。詳細に記載し、それを何度も読み返すことにより初めて階段状に進歩していくのである。p64』

→これをやってくれるのはスーパーバイザーなんでしょうが、この方法で自分自身がスーパーバイザーになれるのですね。素晴らしい。

『これら(私、A0,私A1,私A2…)を、いずれも切り離すことなく一貫したものとして私の中に収めていくような聞き方を多少なりとも意識できるようになった、ということだと思う。p75』

→これは患者さんの話を聞いている自分、奥さんの話を聞いている自分など全部を残しつつ聞く方法のようです。私も意識的にやってみよう。

『他に何かできることはないかと考えて、夕方5分から10分ほど、ただ傍にいるだけの時間を作るようにした。語りの内容でつながることはできなくても、言葉を超えたところでつながれないかと考えて、人工呼吸器が機械的な寒気を繰り返す中、こちらも意識水準を下げて、無心に患者のことを思いめぐらせながら、あるいは妻や娘さんから聞いた話を思いめぐらせながら、ただ横たわるだけの患者の内面に入っていこうと試みた。…やはり人工呼吸器につながれて、瞬目でかろうじて意思疎通はできるという患者が不眠を訴えるようになり、…一晩そのそばで過ごしたりもした。p77』

→この話も本当に素晴らしい。この熱さを受けて私もやる氣が湧いてきます!

『このように、客体水準では…主体水準では…と意識しながら聞いていくと、さまざまな響きが聞こえてきて、語り手を理解する上で深みや厚みが出てくる。p113』

→この方、精神科医ではないのにこのような技を開発し、やっていっている。本当に素晴らしい。用語が難しいですが、主体水準というのは自分のことを投影して話していると捉える聞き方のようです。政治のことについて言っているが実は自分のことだったとか。確かにとても厚みをもって聞くことができると思います。

熱い先生が書いた本、本当に勉強になりました!明日の臨床の糧になるでしょう!

 

迷走する御子…!

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